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2009年10月24日 (土)

"The Memory Keeper's Daughter"その1

Memory_2

"The Memory Keeper's Daughter" by Kim Edwards
出版社 Penguin
401ページ

この本は二年ほど前に一度読んでいます。ちょうどペーパーバックになったばかりで、それを機にアメリカで大ヒットした作品としてラジオ英会話のテキストの後ろで紹介されていたのを見て読みました。

前回読んだ時は、早く先を読みたくて筋を追うような読み方だったので、今度はゆっくり味わいながら読みたいと思いました。ストーリーもおもしろいのですが、文学の香り高い作品です。言葉が美しく響き、音楽を聴くようです。あらすじは次のようなものです。

1964年3月、ある吹雪の夜だった。初めての子供の誕生を心待ちにする整形外科医のDavid とその妻ノラ。予定日よりはるかに早いこの吹雪の夜に、突然妻の陣痛が始まります。雪のため産科医は来れなくなり、デビッド は看護婦のキャロラインと二人で赤ん坊を取り上げることになる。

ノラは無事に男の子を出産した。しかし、思いがけないことに、その後続けて女の子が生まれたが、一目でダウン症とわかる症状を呈していた。とっさの判断でDavid はキャロラインにその女の子を渡し、施設に連れて行くようにと頼む。そして妻には二人目の子供は死産であったと告げる。

それはディビッドが愛する妻を守ろうとしてとっさに下した判断だった。しかしこの一瞬の判断はその後のすべてを永久に変えてしまうものだった。

彼の判断の背景にあったものは、12歳でこの世を去った先天性心臓病の妹と、彼の貧しい生い立ちだった。貧しさゆえに彼らの生活は悲惨なものであり、彼の母親は妹の死後も悲しみから立ち直ることができなかった。だから、彼はどんな代償を払ってもノラを守りたかったのだ。

家を出る時、ノラは「この家に帰ってくる時は、赤ちゃんといっしょね。私たちの世界は今までとは決して同じでなくなるわね。」と言うのだけど、それがまさしく未来を暗示していたようです。

原文はこれです。この言葉が何度か繰り返し使われています。"Our world will never be the same."象徴的な言葉です。

キャロラインは密かにデビッドに思いを寄せていた。施設に入れると彼が言ったことにショックを受けたが、言われた施設に連れて行く。しかし置いてくることができず、そのまま連れて帰り自分の子として育てる決心をし、この町を去る。この時から二つの家族は全く別の場所で、別々の人生を送ることになるのだった。

デビッドは妻や息子を失うことを恐れて生涯、彼らに真実を告げることができなかった。最終章は1989年9月1日。この小説の中で、25年の歳月が流れていきます。

この重すぎる秘密は日々家族の中に根を下ろし、やがてデビッドとノラ、そして息子ポールとの間を隔てる大きな壁となってしまう。ノラとポールを苦しみから守ろうとしてやったことが、もっと多くの苦しみを生み出すことになってしまったのだ。

タイトルとなっているメモリーキーパーというのはカメラのことです。直訳すれば「記憶を保つもの」。結婚記念日にノラがデビッドに贈ったものだったが、彼はやがて取り憑かれたように写真を撮るようになります。一瞬をその場に捉え永遠のものにしようとするかのように、過去を、時の流れを止めようするかのように撮り続けるのだった。

ダウン症の子供を育てることはあらゆる意味で戦いを意味します。長くは生きられないというデビッドの診断を裏切り、娘フィービーは生き延びた。純真でくったくのない愛にあふれた女の子に成長します。苦悩と同時に愛と喜びをキャロラインに与えてくれるのです。果たして生きる価値のある人生とは何を意味するのでしょう。

ダウン症の彼女にとっては世の中は不公平な場所だ。しかし思い煩うことをせず、この世は「どんなことだって起こりうる」素晴らしくもあり独特の場所だとして、すべてをそのままに受け入れている。

デビッドの死後、ついに真実がわかり、怒りと苦悩の末ノラの出した結論は、現実をそのまま受け入れることだった。彼を許す。少なくとも許そうとする。そして「私たちには選択肢がある。恨みを抱き憎み、怒りを抱いたままで生きるか、それとも気持ちを切り替え先に進むかだ。」と言う。

原文ではこうなっています。

"But you and I and Phebe, we have a choice. To be bitter and angry, or to try to move on. It's the hardest thing for me, letting go of all that righteous anger. I'm still struggling. But that's what I want to do."

強いメッセージが伝わってきます。

1960年代は今とは事情がずいぶんと違っていたとは思いますが、ダウン症に対する偏見は今もまだ根強くあるのではないかと思います。ダウン症は英語では "Down Syndrome" ですが、最初にデビッドが娘を見た時に使われた言葉は "Mongoloid" でした。辞書によれば1番目の意味は「モンゴル人種」で2番目の意味が「ダウン症患者」です。この言葉が使われたのは最初の1回だけだったと思うのですが、驚きました。多分今は差別語として使われなくなっているのではないかと思います。

この小説は作者が教会の牧師から聞いた実話をヒントに書いたものだそうです。今聞けばショッキングな話ですが、時代は1964年であり、ダウン症の子供を施設に入れると言うのは当時は普通に行なわれていることだったのです。これに似たような話は私も聞いたことがあります。

ストーリーのおもしろさにぐいぐいひきつけられます。400ページ余りの作品で、英語が易しいというわけにはいきませんが、すばらしい文学作品です。日本語の翻訳版もすでに出ています。

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3.英語の本(原書)」カテゴリの記事

コメント

秋の夜長にぴったり、
面白そうですね。
英語の本、ずっと読んでいない私。
ストーリーを楽しめるレベルで、
読めるかな・・・

娘のインフル、息子のトラブル、セミナーの仕事などが重なって連絡も取れずにごめんなさいね。
来週はCESに参加したいです。Wobさんも戻られたそうだし、みち子さんや皆さんにお会いしたい。
Love,
Kanako


Kanakoさん

本当に、大変でしたね。It never rains but it pours. (降れば土砂降り)状態ですね。
Wobさんが今年もまたカムバックしてきてくれてまた一段と楽しくなりますよ。待ってま~す。

おっしゃるとおり、秋の夜長にピッタリ。良かったらチャレンジしてみてください。

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