書籍・雑誌

2009年7月 5日 (日)

ガラス文庫

「ガラスの仮面」(花とゆめCOMICS)という少女漫画の傑作をご存知でしょうか。すばらしい文学にも匹敵する超大作、後世に古典となって残る大傑作だと信じています。

一見平凡で、何のとりえもないと母親から言われ続けた少女「北島マヤ」が演技の才能を見出され演劇に情熱を傾けて生きる物語です。主人公の演技にかける情熱とひたむきさは見るもの読むものを捕らえて離しません。一見平凡でありながら、劇中の人となって生きる時、彼女は普段の平凡さからは想像もできないほど輝きます。普段の姿(ドジでおっちょこちょいで率直で飾らない地の姿)との落差がまた魅力でもあります。

誰もが持っている願望がそこにあるのでしょう。マヤの魅力と読む人の願望、そしてストーリー展開が相乗効果となって惹きつけられます。

私が「ガラスの仮面」に初めて出会ったのはもう30年程前のこと。歯医者さんの待合室に置かれあったのを見たのが初めてです。現在43巻まで出ているけれど途中から出版のスピードが超スローペースになり数年に1回しか出てこないので私は気が気ではありません。

作者の美内すずえは今一体何歳なのでしょう。このままでは未完のまま終わってしまうのではないかと気を揉んでいます。43巻のうち手元に持っていなかった巻が数冊あったのですが、最近買い足して完全な「ガラス文庫」が完成しました。昔、作家の林真理子さんがこの本が好きで全巻そろえていて、「ガラス文庫」と称し自慢(?)していたので、以来私も真似をして「私のガラス文庫」と自慢して呼んでいます。

演技や演劇界について美内すずえは裏も表も知り尽くしているように思えます。主人公は天才だけど、それを生み出す作者も天才だと思います。

何しろ43巻もあるんだから、読み始めたが最後1日1冊読んでも43日。再び読み返してもまた最初と同じようにのめりこみ、途中で止めることができません。

私の太鼓判付の傑作ではありますが、他の事が何もできなくなるという大変な作品です。読み始めるにはそれなりの覚悟が必要です。

| | コメント (4)

2009年7月 1日 (水)

「ほんとうの空色」

小学校の頃、と言えば今から40年以上も前のことになるのだけれど、そんな大昔のことだから近所には本屋なんてものはなく、あの頃の私にとって本と言えば図書館にあるものかまたは希望者だけが学校で一括して買ってもらう「小学○年の学習」という月刊誌のみでした。

私は人と話すことが苦手でいつも一人で本を読んだり夢想ばかりしているような子供だったので、この学習雑誌が何よりの楽しみでした。多分小学3,4年の時だと思うのですが、付録に「ほんとうの空色」という小さな本が付いてきてそれがおもしろくておもしろくてそれこそ空にも昇りそうなくらいワクワクしました。この本について大人になってから人に話したことがあるのですが、知っている人はいませんでした。

ふと思いついて最近アマゾンで調べてみると、何と岩波少年文庫から出ているではないですか。時々思い出しては、「付録についてくるような本だから、そんなに有名な本ではないだろうし、もう二度とめぐり合うことはないだろう」と思っていたのに、見つけたときはうれしい驚きでした。ただ岩波少年文庫のこの本の第1刷は2001年となっているので私が昔に読んだものとは翻訳が違っているようです。英語で読もうと思ったのですが、実はハンガリーの作家でハンガリー語が原書でした( ̄○ ̄;)!

「ほんとうの空色」とは、塗るとほんとうの空になる絵の具のことでした・・・「それじゃ何のことかわからん!」というコメントをする人がいたので、野暮になるけど若干解説を加えると、朝太陽が昇り、青空が広がり雲が流れ、夕方になると日が沈む、夜は月が出て星がまたたき、雨の日はどんよりとして雨が本当に降ってくる。主人公の少年は屋根裏部屋にある大きな道具箱の蓋の内側一面に「本当の空色」を塗り、夜になるとその中に入って夜空を楽しんでいました。あんなにちゃっちくはないけど「ヴィーナス・フォート」のようなものを想像してみてください・・・「そんな絵の具が私にもあったら」と当時は空想にふけったものでした。

昨日アマゾンから届いて早速読んでみましたが、ワクワクして懐かしく、何だか小学校の同窓会で昔のクラスメート達にあった時のような気分でした。そう言えば、人と話すのが苦手だったにもかかわらず学校の休み時間によくこの「○年生の学習」の付録についてくるお話をクラスメート数人に読み聞かせをしていたのを思い出し、どうしてそんなことができたのかと今考えると不思議です。多分1年から4年生くらいの間のことだったと思います。本を上手に読むことができるようになったのが人より早かったからではないかと思います。また、ワクワクした気持ちを自分の中にだけにしまっておけなかったのかもしれません。

主人公の少年が半ズボンにうっかり落とした絵の具の汁でできた小さな空(それが唯一残った最後の空でした)に別れを告げ、すっかり小さくなったそのズボンを脱ぎ捨てた時、彼は少年から大人になったのでした。二度と戻らない私の遠い子供時代と重なり、ちょっぴり切ない気分になりました。

| | コメント (4)

2008年10月 7日 (火)

「たった3ヶ月で英語の達人」

Eigo


前に一度この本を読んたことがあり、自分のHPでも紹介しているのですが、久しぶりに取り出して再び読んでみました。ユーモアたっぷりに自分の経験を語っていて、読み物としてもとてもおもしろいし元気が出ます。
(「たった3ヶ月で英語の達人ー留学なんで無駄!お金のかからない速習法」志緒野マリ著(祥伝社黄金文庫))

副題が「留学なんで無駄!お金のかからない速習法」とありますが、筆者の志緒野マリさんは留学しても言語がモノになってない人たちの例を挙げ、特に親掛かりの留学が一番成果が上がらないものとしています。また逆に留学したことはないけどきちんとした英語を話す人に出会った体験談も書いています。全部が全部とは思いませんがかなり共感できるところがあります。(でもチャンスがあったら留学はしたいとも思いますが。)

本の中で彼女は一人旅の勧めをしています。彼女自身は40歳にして一人旅デビューしたとのことです。「淋しい中にディープな楽しみを感じられるようになったら、一人旅を楽しめる、自立度の高い人に成長したのだと言える」と言ってます。そして英語修行として考えた場合にアジア、特にインドがお勧めであり、インドに行く前にネパールあたりで修行してからインドに行ったらいいと書いてます。その理由については長くなるので省略しますが、インドでの武勇伝、エピソードの数々は本当におもしろかったです。

英語の修行のための旅行というとアメリカ・イギリスを考える人が多いけど、コミュニケーションツールとしての英語を習得したいならアジアが良いと言っています。現地の人たちとのコミュニケーションもそうですが、彼女がアジアで出会うのはアメリカやヨーロッパ、オーストラリアなどの旅行好きな国の人たちで、そういう人たちは旅先での出会いを求めていて友達になりやすい。また同じように外国を旅する旅人という点で対等に話ができるのだそうです。

海外旅行の後、増えてしまった体重を減らすために考案した一石二鳥のダイエット法がおもしろかったです。バイクマシーンで自転車こぎをしながらコードレスヘッドホンで洋画のビデオを見るというもの。ビデオがおもしろくて夢中になるとこいでいることを忘れるそうです。だからこぎやすいビデオを選ぶ。私も以前真似して挑戦してみましたが、挫折しました。それにコードレスヘッドホンはあまり具合の良いものでもなかったです。人それぞれ自分にあったものを見つけないといけないんでしょうね。私も彼女と同じで運動大嫌いなんですね。何かいい方法はないでしょうか?

なるほどと納得したのが英語学習とダイエットの関係。
1.なかなか続かない
2.やったらやっただけの効果はある
3.中断すると元の木阿弥に戻る
4.続けるのはむずかしいが、続けることができれば、いずれはモノにできる

まさにその通りです。これは語学の学習だけのことではないでしょう。「継続は力なり」だと痛感します。私は娘と一緒に何年もピアノを習っていましたが、まさにピアノの練習もこれが当てはまります。今は3番にあるとおり「元の木阿弥」状態です。とほほ・・・

がんがん勉強したいという人だけではなく、初心者で楽しんで英語を習得したいという人にも役立つように書かれています。日本お笑い学会の会員だそうで、かなり爆笑もののエピソードが披露されています。

私自身はアジアを一人旅する元気はないな。初めて行った海外一人旅はついこの前行ったロンドンですが、ロンドンだからこそです。治安や衛生面である程度安心できるところじゃないと心配性の私にはちょっと無理かも・・・

この前の連休でグアムに行ってきた友達の話だと燃料チャージが一人22000円だったかな。夫婦プラス子供一人で6万以上かかったらしいです。燃油高騰で海外旅行もそう簡単には行けなくなってきたかも知れません。

| | コメント (8)

2007年12月 2日 (日)

「変身」

以前、読書家の方から頂いた本の中からカフカの「変身」を読んでみました。学生時代に一度読んで、全く意味不明だったんですが、今読んでもやっぱり意味不明です。

なぜ主人公はある日巨大な虫に変身していたのか。勝手に解釈しろということなんでしょうが、虫に変身した主人公が哀れにも朽ち果てていく過程は不条理で切ない。しかも父親に投げつけられたりんごが甲にめり込んでそれが原因でやがて死ぬなんてあまりに気の毒ではないか。そんなわけで、何だか悲しい話に最近ちょっぴり不幸な気分の私でした。

| | コメント (0)

2007年11月24日 (土)

「ジーキル博士とハイド氏」と「ビリー・ミリガン」

私のかつての英会話の生徒さんで大変な読書家の方がいるのですが、その方が一年ほど前にもう読まなくなったからと紙袋いっぱいの本を下さいました。その中の一冊が「ジーキル博士とハイド氏」でした。私が初めてこの本を読んだのは多分中学生の頃だったと思いますが、非常に興味深くもあり怖くもあり衝撃的でもあったということを覚えています。

「ジキルとハイド」と言えば二重人格の代名詞のように使われているので、誰でもある程度内容は知っていると思います。決して楽しい内容ではなく、むしろ気分が沈みそうな本なのでもらった本の中に混じっているのを見ても全然読む気はなかった。にも関わらず、先日チラッと冒頭を立ち読みしたところ(自宅で立ち読みと言うのも変ですが)あっという間に引き込まれ、いつの間にか完読していました。

人の心の中に存在する二つの顔。誰でも少なからず自分の中のジキルとハイドを感じているからこそ、この小説は恐ろしくまた興味深いのではないかと思います。

1886年に書かれたとありますが、時の試練を経ても読み継がれる名作だと思います。翻訳バージョンで読みましたが、原文とも比較してみたい気がします。原文自体がこのように古めかしく勿体ぶっているのか、または翻訳調の文体が一種独特の雰囲気をかもし出しているのか、日本語の文体にも独特の魅力がありました。

私としてはこの手の読み物は気分が滅入りそうで読みたくないと思う反面、抵抗しがたい魅力もあるようです。二重人格と言うと思い出すのは「24人のビリー・ミリガン」。三年ほど前に原文で426ページにも渡るペーパーバック "The minds of Billy Milligan" を読みました。実際に存在した多重人格者の記録です。その時の私のレビューには次のように書いてあります。

「これは実話で作者の Daniel Keys がビリー・ミリガンに何百回も面会を重ね、また多数の関係者と会い忠実に真実のみを記したものです。自分も含めて24人の人格が一人の人間の中に存在していて、一人一人の人格は性格も才能も知能指数も国籍や性別や年齢さえも違っている。1年ほど前だと思いますが、テレビでビリーを取り上げた番組を見たことがあり、異なる人格がスポットに現れ意識を持つ様子を映した実際のビデオを見ていて、なぜこういうことが起こるのか不思議でさらに興味を掻き立てられました。彼の場合子供のときに継父に虐待を受けたことで、もはや自分が自分でいたくなったということが大きなきっかけのようです。
 
これはかなりまれなケースだと思いますが、きっと人は誰でも自分の中に全く異なる自分、相反する要素や性格が存在するのではないかと思います。また、社会に適応していくため、自己防衛のために本来の自分ではない自分を作り上げていくものだと思います。
(中略) 
とにかく厚くて字が細かくて根性の要る本ですが、読むだけの価値はあります。常識では考えられないような話だけど、実話であるだけに迫力があり圧倒されます。人の心の不思議さ奥深さに驚嘆せずにはいられません。」

驚嘆というのは適切な言葉かどうかわかりませんが、圧倒されます。「ビリー・ミリガン」より「ジキルとハイド」の方が手軽に読め、楽しめるものになっています。読者を引き込ませるテクニックがあると思います。「ジキルとハイド」を読み終わった昨日の夜は、何だかこわい夢を見たようです。心理小説のジャンルに分けたいものですが、ホラー小説の類かも知れないですね。

| | コメント (0)

2007年8月31日 (金)

一人二役

Hitori_2


「次長課長」の河本准一著「一人二役」を読みました。子供時代から今に至るまでの彼と彼の「オカン」が二人で歩んできた人生が書かれています。

実は2日ほど前、「徹子の部屋」で河本さんがゲストに出ていた時にたまたま後半部分だけを見たのです。わずか30分足らずの間に河本さんの人柄にすっかり魅了され、そこでこの本の存在を知り、早速買ってきて一気に読んでしまいました。(私はすぐ感動するたちでもあります。)

彼は裕福な家庭に生まれ何不自由ない暮らしをしていたけれど、9歳の時に「オカン」が離婚。その後オカンが再婚した相手から家庭内暴力を受けます。命にかかわるほどの虐待を受け、その家からの「夜逃げ」ならぬ「昼逃げ」をすることに。「昼逃げ」決行の際には父親の連れ子であった小さな弟を置いていかなくてはならず、その光景を想像するだけで、私まで胸が痛くなりました。

オカンは女手ひとつで彼を育てるために母親と父親の一人二役をこなしてきました。パンチパーマで風貌も男と間違えられることもしばしば。まさに堂々たるおっさんぶり。何故かオカンはパンチパーマが好きらしい。

「徹子の部屋」で河本さんが言ってましたが、「かわいい、きれい」ではなく「かっこいい」というのが彼の母親に対して使いたい言葉であり、言ってもらいたい言葉なのだそうです。オカンの生き方はかっこいい。ことばで何かを教えるのではなく生きる姿勢を見せることで全部大切なことを息子に教えてきたのです。

私も人の親ではあるがこんな風には到底できません。それにしてもオカンも偉いが、子供も偉い。親がいかに背中で生き方を見せてもぐれる子供はぐれる、世をすねる子供はすねる。すねることもなく、うらむことなく、母とともに誇り高く生きてきた河本さんの人柄に惚れました。

全編を通じてにじみ出る彼の優しさとオカンに対する愛情に読んでいる私までやさしい気持ちになりました。オカンは自分の「連れ」だと言う。二人きりで生きてきた同士のような感覚なのかも知れない。

今でも一緒に風呂に入るというのにも驚きました。息子とお風呂!う~ん、絶対考えられません、私には!

三年前に温泉の家族風呂に入った時、彼はオカンを抱きかかえお湯の中につけたりあげたりして大はしゃぎしたそうで、奥さんがそれを見て大笑いしたというエピソードも書かれていました。当時仕事で一緒だったさんまさんはその話を聞き、散々彼をからかったあげくしみじみと「おまえ、ほんま、オカンが好きなんやなぁ~」と言ったそうです。二人は性別も母子の関係も飛び越えた特別な存在なのです。

さて私の買ったこの本はこれからいろんな人の所を旅することになると思います。読みやすいので誰でもすぐに読めるので勧めやすい本です。

ちなみに昨年「佐賀のがばいばあちゃん」を読んだ時のことです。いろんな人におもしろさを伝えたくて熱心に内容を説明し、エピソードをいくつか再現し、その結果何人もの人が私の買った「がばい」を読むことになりました。また待ちきれず自分で買った人もいました。

私は感動すると黙っていられずにすぐ人に吹聴したくなるのですが、ある人は「まるで映画の一シーンでも見ているようだった」と私の再現劇を評して言いました。作中の人物になりきって演じてしまうのです。

私の娘の夫や、息子のガールフレンド、それにガールフレンドのお母さんまでが読みました。娘の夫が本を読み終わった時に言った言葉は「しかし、ほとんどおかあさんから内容を聞いていたので、読む前から全部知ってる話ばかりでした」ですって。

「ネタを二、三個ばらしました」のレベルではなく、めぼしいところはほとんど網羅してたんですね。気をつけなくっちゃ。

| | コメント (2)